高乳酸血症の有無による集中治療室に入院した低血圧の猫の生存率の分析39例

 高乳酸血症の有無による集中治療室に入院した低血圧の猫の生存率の分析39例についての報告によると、低血圧で乳酸値が正常な猫は高乳酸血症の猫より生存し退院できる確率が有意に高く、血中乳酸濃度は他の臨床所見や検査と併せて検討すると有用な予後指標となり得るとのことでした。

 臨床的に血清乳酸の測定は重篤なヒトの患者に対する組織の灌流および酸素供給の評価、リスクの階層化ツール、予後判定および治療の反応の判定に有用であるとされてますが、最近の研究では獣医学においても同様の応用ができることが示唆されています。高乳酸血症は低循環および低酸素状態において一般的で、敗血症、腫瘍、薬物、ミトコンドリア機能障害および先天性代謝異常とも関連するとされています。基準範囲は犬で0.3~2.5mmol/L、猫で0.5~2.0mmol/L、動脈血、静脈血で臨床的な相違はなく、直近の運動、ストレス、発作、興奮、食後および採血に時間がかかった場合2.5~10mmol/L乳酸濃度が上昇するそうです。また28日齢未満の子犬は静脈乳酸濃度が有意に高いそうです。

 今回の報告では、2005年1月から2011年12月の間に大学病院の集中治療室に入院した39例の猫についてドップラー法で動脈血圧が90mmHg以下のときの前後1時間以内の血中乳酸濃度について検討し、それぞれの猫について退院までの生存率、病気の重症度、入院期間、年齢、体重、PCVの評価をレビューし、高乳酸血症(2.5mmol/L以上)があるかないかで比較したそうです。結果は39例中6例(15%)の猫が生存退院し、12例(31%)は正常の乳酸値(<2.5mmol/L)、27例(69%)が高乳酸値で、正常の乳酸値の猫の方が血圧が高く生存率も高かったそうです。5日目のカプランマイヤー生存曲線の生存率では正常の乳酸値の場合は57%だったのに対し高乳酸値の場合は17%でしたが、年齢、体重、入院期間、PCV、病気の重症度は正常の乳酸値と高乳酸値の猫の間で有意差はなかったどうです。

 

参考文献

Journal of the American Veterinary Medical Association

April 15, 2017, Vol. 250, No. 8, Pages 887-893