ネコヘルペスウイルス-1(FHV-1)に起因する自然発症の眼、呼吸器および皮膚疾患の治療のためのファムシクロビルの経口投与を行った59例についての報告によると、ファムシクロビルを規定量で投与するとFHV-1感染の猫の臨床徴候が改善され、副作用もほとんどないが、投与量や投与回数による効果への影響や治療期間が短縮できるかどうか評価するにはさらなる研究が必要であるとのことでした。
抗ウイルス薬による全身性の治療は、FHV-1感染の治療において有効であるとされています。アシクロビル、バラシクロビル、リバビリンなどいくつかの薬物が研究されていますが、これらは効果がないか、もしくは猫に毒性があります。ペンシクロビルは、FHV-1感染に対して優れた活性がありますが、経口投与では十分に吸収されないことがわかっています。しかし、ペンシクロビルのプロドラッグであるファムシクロビルは、腸および肝臓で脱アセチル化されて活性化合物に変換されペンシクロビルとなり、一旦吸収されると段階的に三リン酸阻害ウイルスDNAポリメラーゼに変換されてウイルス複製を阻害します。薬用量は猫1頭当たり62.5mgのファムシクロビルの経口投与では血中濃度が有効でなく、125mg以上の高用量(8〜12時間毎)を推奨する研究もありますが、事例が少なく確立された投与のプロトコールはありません。
今回の報告は2006年から2013年にかけてFHV-1感染が疑われた猫を追跡調査し、ファムシクロビルの低用量(約40mg/kg)と高用量(約90mg/kg)経口投与1日3回を比較したそうです。猫の年齢は0.03~16歳の範囲で、症状は結膜炎(51例[86%])、角膜炎(51例[86%])、眼瞼炎(19例[32%])、鼻汁またはくしゃみ(10例[17%])、皮膚炎(4例[7%])がみられたそうです。臨床的改善は主観的に分類され著しく改善したのが30例(51%)、軽度が20例(34%)、改善がみられなかったのが9例(15%)で、改善するまでの期間や改善の度合は低用量投与群よりも高用量投与群の方がよかったそうです。ファムシクロビル投与に起因する可能性のある副作用は10例の猫で報告されました。ほとんどの飼い主(29/32例[91%])は治療に関して満足だったそうです。
参考文献
Journal of the American Veterinary Medical Association
September 1, 2016, Vol. 249, No. 5, Pages 526-538